救済以外全部

犬の不在

崖にいる馬鹿

いつか春の嵐吹き付ける草原ですべての正気を失う安堵

 

光満つ車内でぼくはヒーローかひとしく赤が流れる皮膚は

 

約束が散らばり果てる続・聖書燃してしまえばあたたかな街

 

かじかんで霞む視界の暗きことついぞ何にもなれないままか

 

祈りなど届いたことがあったかよ朝の六時を閉ざす空隙

 

一切というとき我は含まれぬ垢まみれの湯を排水に捨つ

 

雄鹿ども奈良公園の便所前あの日無力に穿たれた雌

 

祖母亡くし墓ばかり立つ家系図を焼いた明朝ガーベラは凪ぐ

 

恥いれば重なるおれら他の家が刻む野菜と同じ断面

 

赦してと君居ぬはずの午後三時さいわいと書く殺しちまえよ

 

ざあざあと雨降る神のふりをするお前を救えぬ俺でも良いか

 

無能でも良いよ午後九時のロードショーには関係ないよ

 

夭折の天才詩人目指すから君よ来世は葬式に来て

 

あかあかと火は降るきみの慟哭の代わりに焼けるかつての市街

 

いく末を知らないままの僕たちにバルーンシップをひとつください

 

なじられて人間である君の笑みまぶたの裏にまた映してる

 

喪失をまだ花置かぬ花屋にてよくある話の終わりなんてさ

 

祀られる君を眺めて日が暮れる夕焼け小焼けで帰る家など

 

愛犬にやる花枯れたガーベラに水をかけても戻らぬままだ

 

白さほど正しいものは無いものな電灯はつかない夜に満ちる空域

 

いつまでもそんな砂丘を知っている壊れゆくまで透明な城

 

手つかずのケーキに犬歯の跡残るやっぱ葬式あげなきゃだめだ

 

彷徨った千日分を捧げます平凡な身体に星よどうかよだかの

 

ストローを噛みしだいてるベランダの橋本にゃーよ君は笑えよ

 

たましいを塗したパンだカルシウム多すぎんだよ君が死ぬから

 

コーヒーを飲み干せぬまま俺たちは砂糖を入れる術を知らない

 

脅迫文オレあの時のまんまだよこのままだと世界滅ぶよ

 

生まれない春たちよ僕はただ生きる力が欲しくからからと鳴る

 

祝祭の風船浮かぶ河原にて閉店セールのチラシを拾う

 

さようならなんて言えずに青い鳥いま焼き捨ててしまったような

 

宗教だ僕を救って人殺し春待つときすら何も持たずに

 

指先を擦り合わせても灰が落ついつか真白に鳥たちの午後

 

春に待つ夜すら暗く一匹の犬がリードに繋がれている

 

春に待つ夜すら暗い隔たれた犬のリードに鋏をあてる

 

きみという人でも本来肉の身の何も違えず回るモーター

 

怖いのはどちらであるか死人にも自壊した日の夕焼けがある

 

おまえがでっかくなるから念のため有刺鉄線張ってんだけど

 

日が差さぬ部屋にて果実を齧らんと滅亡前夜に植えた木の

 

馬鹿すぎて愛だったのか血で濡れた爆薬だから俺は死なない

 

海峡を剥いだ大きな手の内に破するまで一つの墓標立つ

 

信じ切る朝なく暮れるアザミの葉千枚敷くも兄は帰らず

 

沸いている鍋の外部でひとりきりせめて夜へと紛れるために

 

裏道に銀の当たりはかすかに光る他家の明かりが灯る夜

 

切れかけの電灯ぬるい温野菜ある日突然町が燃えれば

 

眠らずに数千の旗打ち立てるおまえが生きてるだけで良かった

 

いっせいに肉断ち切れる毎朝の線路にいつも叫びが残る

 

街の灯は灯らず我を捨ててゆくなべて向日葵焼かれた空き地

 

隣室にきみの虚言がそのまま在りただ光るだけの無用な愛が

 

偽物の春が離別を告げる午後ポインセチアが右手で揺れる

 

≪おれは負けたよ≫裏路地の柔らかい死体両手でなぞる

 

じゅんぐりと発狂してく解けてた糸はそのまま水路に浸る

 

線路にも柔く光は飽和して散らばる肉を拾えず生きる

 

そしてまた春の破たんに呼びかける青い空とかやめてください

 

エンドロールを差し替える全ての犬が荒野に駆ける

 

それじゃあねさよなら前にお別れを蝋燭が灯ったままのケーキみたいに

 

殺すから波に消されるまで殺意 海辺まで来て血だらけのまま

 

あの日みた星はセロハンの黄色 夜空はきみを救わなかったね

 

縊死後の夏に通り雨降る助けてって言え悲しいって言え

 

犬用の足洗い場になるんだよ来世できっと犬を愛せる

 

破断した指から砂が零れてくどこにも行かない約束するよ

 

ベランダの端に裸足で立つ君はミッキーマウスのマーチを謳う

 

草原に死体が二つ並んでた五月中旬の刀傷沙汰の

 

坂道を諦めながら下ってく全部が過去になるから何だ

 

あの部屋は舞台だったね真人間演じるための居場所だったね

 

アンドロイドになったって何?何も言わずに脳移植すな

 

弱いんだ肉を介していちゃ駄目だ永遠に俺はここにありたい

 

初夏にいて絶えず祈りを捧げてる誰も知らない暗いところで

 

何だって起こり得るからこのボタン押して俺が死ぬとこ見てて

 

爆破するために集まるデパートの窓のトンボとかなり目が合う

 

嘘だらけの人生だけど愛してる破滅したってここにいるから

 

朝焼けの夢の波止場で待っている途上とわかっていてもなお

 

破断した花束いっしんに拾う壊れたっておれのじゃないかよ

 

海望むしるしにハマナス噛みながら街を去りゆく葬列として

 

終わってく仇花だから燃やしても綺麗だ庭に火の粉が舞って

 

アパートに兄は喪服を置き忘れ春の向日葵われを見下ろす

 

人でなし星になるため焼かれてる出棺の日に空が青くて

 

何百の嘘と一緒に埋められる君が歌った「アダウン、アダウン」

 

髪ゴムのように命を無くすひと青葉の青も知らないままで

 

風呂場にて影が落ちゆく春雷に血まみれで問うあの人はどこ

 

花籠は逃げていきたい君のため一番ホームにぶちまける花

 

このまま俺と祈って死のう陽が届かない部屋に藁を敷くから

 

何羽もの鳩と失踪した姉が幻肢となって痛み出す夏

 

クジラほど大きな死骸持ち帰り水草と燃す降霊失敗

 

暗がりに立って笑った君だった露文学読めないなんて嘘だったねぇ

 

灰かぶり五月は火事に向く季節きみの死体と東京に行く

 

いつの日か燃えていこうと約束を滅びていないだけだよずっと

 

深夜バスに手足伸ばせる場所もないつまりは無能だったんだろう

 

どうしても手に入らないものがある私の怒りと関係なしに

 

死んじゃった後に快晴今すぐに破滅したくて駅を燃やした

 

晴れ間にも影が差すなら幸福を知らないままで死んでもいいよ

 

きっともう通ること無き道にいる「今度」と言って君は海見る

 

歯の欠けたあなたがくれた中古品カメラで滲んだ夕日写す

 

この街の南外れの質屋では欲しい手紙が売られています

 

ぼろぼろの納屋にスコップ立てかけるロケットだと思うまだ働く

 

殴っても殺しても海 痛かった染みる目だけどあなたが見えた

 

迷わずに枯れゆく花を手折る朝あたしは死んでなんかやらない

 

誠実な言葉としての張り手なら鳩時計の鳩頽れている

 

朝を待ちながら温める無精卵みんな死ぬのね楽しかったよ

 

朝焼けに火傷痕ごと血は透ける多分生きてるだけで勝利だ

 

いつの日か死んじゃうけどね愛してる♡油性で描いたホワイトボード

 

廃ビルのトイレで吐血してたんだ三千万と犬が欲しくて

 

線路まっすぐ伸びていく身の内を焼いて白線内側に立つ

 

そしてみな残光の向こう燃えている明るい場所にオールが浮かぶ

 

明日から生きていこうよスーパーのトマトと白菜妙に安いし

 

持ってるのすべてお前に挙げちゃおう夜の六時の地球岬

 

ゆき果てた白ばかり持つあらかじめ失うなんて器用だきみは

 

ゴルゴダの丘で歌えずうつむいて楽しいことがこんなに痛い

 

川辺の石を蹴る仕事だと聞いてはいますいるのだけれど

 

死なないよ獅子はそこらで愛し合う投げ落とされた闇夜の底で

 

配管に汚水が通る雨音に交じり流れる血潮があって

 

ごみだめに朝露光る春にいるうつぶせに花びら握りしめ

 

行きついた正しい夜半ベランダに用途不明の縄があること

 

神様として死ななきゃならないあの人を何もできずに見ている

 

幸福でないような午後100日も水やらぬ花枯れずに残る

 

誰もみなガーゼを腕に押し抱きひとり手背に針を刺されて

 

告発が世の中全部を支配するお前に天使の責務を課して

 

雨粒の頬流るる庭つちくれに埋め直された跡があり

 

まぼろしを見ていた春の砂丘からどこにも行けず幸せだった

 

仄暗き夜に折られる枝のごときみの末路を誰も笑うな

 

斜光差す一番線に遺書が降るあの日廃した天使の責務